サウンドデザインに関する文書の翻訳

2007年9月29日土曜日

電話のベル2

一般論 対 特定の原理
最後の実例は特定の知識、古い電話の話題における専門的な領域の知識が必要だった。何らかの方法で非現実的な音をデザインする際に、エンジニアリングの知識を必要とすることはもう一般常識だ。ある実例はモーグフィルタ、808ドラムマシン、テルミン、1970年代のハモンドオルガンなどを作る。ほとんどの音は、元々電気または電子だ。覚えておきたいのは、AY38610サウンドチップはシフトレジスタをノイズのソースに使うと、日本のヴィンテージビデオゲームのノイズを忠実に再現するのに非常に役立つかも知れない、とかそういうこと。ある種のプリンターが24ポールのステッパーモータを使っていることを知っていれば、ドットマトリクスプリンタの音を忠実に再現するのを助けてくれるかもしれない。V8エンジンと2ストロークのモーターサイクルエンジンは広大だけど、実世界での物理的なデザインに根付いている。何故2羽の鳥が異なった音を鳴らすのか、というのは生物学の知識が役に立つ質問。でもこれらのそれぞれが限られた知識を動かす。

ときどき僕らは異なる種類の知識、僕らが”第一原理"とでも呼ぶような、もっと広範囲にわたる種類の物理的と数学的推論を使うことが必要になる。"関係する音はたいてい似たような時間フレームで再生停止される"とか、"振動する膜は常に指数関数的に減衰する"というような報告は、サウンドデザイナーにとても役立つ広い知識を語りかける。これらのルールは合成の根本における数学の基本的な法則よりも少し基礎的でなく厳密さを欠き、常に真とは限らないが、それらをデザインに採用したり、何が機能するかを理解することで沢山のものを得ることができる。

2007年9月28日金曜日

Phoney Mc Ring Ring

さあ、全部のパーツを集めてひとつの実例を作り上げる時がきた。自分で組み上げてもいいし、この実例をダウンロードして研究してもいいだろう。

スタートボタンは電話番号を表すリストをシンプルなシーケンサーに送り、それぞれの数値がダイアラに渡される。幸運なことに電話線がつながっておらず、すぐに呼び出し音が開始する。もちろん向こう側の人間を叩き起こして、重い腰を上げさせた後、電話をとらせるのには時間がかかるけどね。
puredataファイル

リンク
Amplitude modulation http://en.wikipedia.org/wiki/Amplitude_modulation
In practice http://www.soundonsound.com/sos/mar00/articles/synthsecrets.htm
Modulation http://ccrma.stanford.edu/courses/220b/topics/modulation-synthesis/

Telephone bell synthesis 1
Practical Synthetic Sound Design

無口な人をいらつかせる雑音って?

あるハーモニクスの組み合わせは聴くのがちょっと辛い。調和的でなく、色がぶつかり合って視覚的に気持ち悪いのと同じ感じで僕らの感覚を苛つかせる。人の脳を最も邪魔する音のひとつは赤ちゃんが泣く音だ。実際ある音は気持ち悪くストレスに感じる音の全ての組み合わせを持っている。これらの音のぶつかりは不協和音と呼ばれる。組み合わせは、対になる音と整数の関係にない場合や因数や公倍数がない場合に、より不協和な音となる。素因数はここで僕らの役に立つ。もし2つの周波数が互いに素であれば、そいつらはとても不協和になる。2つ3つの不協和な周波数を使うだけで、僕らの注意を引きつける音を作れるんだ。勿論初期の電話を作った回路のデザイナー達はこれに気づいてた訳ではなく、コストを抑えるために少しの変調器で注意を引くように実験した結果そうなっただけだと思う。
どうやったら比較的不協和な音色の全ての集まりを簡単に作れるだろう?興味深い疑問を考えよう、あるサイン波を複雑なスペクトラムで増幅したらどうなるか?言い換えると、4つのハーモニクスを含んだAMトーンのソースを出力し、別のサイン波で増幅したら何が起こるか?答えはもっと複雑なスペクトラムだ。複雑な音色のそれぞれのハーモニックは加算され900Hzの新しいサイン波によって増幅される。1000Hzと300Hzから始めて1900Hz,100Hz,1200Hz,600Hz,2200Hz,400Hz,1600Hzと200Hzに加えて元々の1000Hz,300Hz,1300Hz,700Hzそして900Hzの要素。わお!たった3つのオシレータと2つの増幅ブロックでこんなに複雑な信号が作れたよ!

じゃあセグメントに分けられた着信音について考えよう。決まった間隔で再生したり止めたりすると、その音はより聴かれるようになる。というのも、僕らは絶え間ない音よりも、変化を聴く傾向にあるからだ。これは一般常識だけど、BigandとMcAdamsのデモによる研究が参考になるだろう。実際のところ、一般なニューラルシステムはほとんど変化しない値はあまり知覚しない。そしてそれが視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のどれであれ、ある質や量が実際私たちが知覚したものだ。今言っているのは”安定した音色”であることを忘れないで。どんなオーディオ信号だって定義によれば実際は変化する量なんだ。ということで、僕らの次のステップはチャンクの中に作った安定したスペクトラムを壊し、変調に再利用する。とても遅い周期でスイッチのオンオフを切り替える矩形波で音色を変調させる。

矩形波を作るには、クリッピングと呼ばれるちょっとしたトリックを使う。[clip~]要素は2つの境界内、もしくは閾値以下である限り、信号を変化させないで通す。いったん信号が閾値を超えたら、正であろうと負であろうと、その最大値または最小値にクリップされ固定される。サイン波を増幅してアシンメトリカルにクリップさせた場合、矩形波を使ったレベルコントロールみたいなことができる。



Telephone bell synthesis 1
Practical Synthetic Sound Design

変調(AM)

えっと、電話はかけられるようになったんだけど、誰かが呼んでるってことを知るための音がないよね。さあ"変調"と呼ばれる新しいテクニックに移ろう。僕らは既にオーディオを増幅する要素を[*~]知ってる。2つのサイン波を足し合わせるんじゃなくって掛け合わせてみたらどうなる?これが変調だ。変調は新しいハーモニクスを加える、そしてそれは最初の2つの周波数とは異なったものだ。2つのオリジナルの周波数は出力された信号にも聴き取れるものだけど、他にも得られるということ。でも新しい周波数はランダムじゃなくて、ソースとなった信号と数学的な関係を持つ。どうやって?そうだな、変調を使うとたいていベースの周波数について対称的なハーモニクスが加わる。そしてシンプルな増幅やAM(振幅変調)はソースの和や差なんだ。言い換えれば、1200Hzと200Hzの成分をひとつにつないだとき、1000Hz(1200-200)ともうひとつ1400Hz(1200+200)を得るってこと。ピュアなAMはうってつけだね。信号Fを信号Mで変調すると、F+MとF-Mの2つの新しいハーモニクスを得る。これを聴くか、PureDataのパッチをダウンロードして下の図の出力と比べてみて。



ピュアデータファイル.pd
オーディオ.mp3

ちょっとずつベルの音らしくなってきたね。けどまだまだだ。呼び出し音の実例はもっとリッチで、沢山の周波数を含んだ複雑なスペクトラムを持ってる。変調を使って単なるランダムないくつかの新しい周波数を作り出す前に何故僕らがある特定の種類のスペクトラムを選ぶのかについて考えよう。呼び出し音の模倣に挑戦するひとつの方法は、ベルハンマーの効果を再生成することだ。初期の機械的なベルはソレノイドを内蔵していて、アーム付きの磁気ブザーがベルを固定する錘に付けられていた。振動の周波数はたいてい8Hzから20Hzだった。この周波数での変調はさえずりのような効果をもたらし、本物の電気機械仕掛けのベルの音と全く似ていないこともなかった。DTMFトーンもまた、聴いていて楽しかったけど、あれは技術的な機能としてちゃんと動くようデザインされた結果得られたもの。逆に呼び出し音はワイヤーを通して運ばれるためではなく、明確に復調され、どちらかと言えば人間の注意を引きつけるためにデザインされた音だ。ある音が他の音より人の注意をより引きつけるってことはどのようにして起こり、何故起こるのだろう?